久しぶりに週末の休みが取れたので自宅から比較的近くの「中神(なかがみ)の獅子舞」を撮りに出かけた。去年同様、一番乗りだった。「獅子宿」のご主人に声をかけていただきお茶をご馳走になり、床の間に置かれた獅子頭を撮影させていただいた。
ここでは獅子は大頭(だいがしら)・中頭(ちゅうがしら)・雌獅子(めじし)と呼ぶ。本番で使われる獅子頭は2組あり、新しい方(金色の方)は平成7年に青梅市在住の土方重一さんという方に作ってもらったそうである。大頭4キログラム・中頭3.5キログラム・雌獅子3キログラムほどの重量とのことである。古い獅子頭は「御礼狂い」・「剣懸り」・「太刀懸り」の際に使われる。「水ひき」は唐草牡丹の文様を地紋織りにした正絹で非常に鮮やかな朱色で、黄色く染めた麻のミノ毛や金色の獅子頭(新しい方の獅子頭)と相まってかなり華やかな印象を受ける。
獅子宿を務めたお宅への御礼としての「御礼狂い」の後、獅子舞一行は熊野神社までの「道中」に出る。途中、休息所となるお宅に立ち寄り休憩の後、獅子役を交代し、休息所の提供の御礼として一庭狂って、再び熊野神社を目指す。休日の東京郊外の街中、普段見ることがない華やかながらも素朴な行列が進んでいく様子も、ここの獅子舞の見せ場のひとつかもしれない。こちら獅子舞の「道中」の行列には「衣装箱」(2名)と「奉銭箱」(1名)という役を務める者がいる。
獅子頭の耳をカタカタと鳴らすのも、ここの獅子舞の特徴のひとつだろう。獅子の耳が可動式になっている獅子頭はけっこう見かけるが、ここの獅子舞のようにまるでカスタネットのようにカタカタと鳴らすのは初めてである。聞くところによるとかなり本気で首を振らないと鳴らすことはできないとのことである。首に括り付けたかなりの重さの獅子頭を激しく振るのであるから、首への負担は相当のものだろう。また、「太刀懸り」の際に2匹の獅子が大きく海老反りになるのもここの獅子舞の特徴のひとつであり、見せ場でもあろう。
若者の人口が少なく後継者不足で廃絶の危機に瀕している獅子舞もあれば、ここのように多くの若き担い手に恵まれた先行き明るい獅子舞もある。
各地の三匹獅子舞について詳しく調べ「かわせみ通信」という冊子にまとめられている地元にお住まいの川崎 実さんという方に去年お会いすることができ、ここの獅子舞について詳細に記された「かわせみ通信」の48号をいただいたので、資料として今年のレポートにも一部引用・参照させていただいた。
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